徒然

読む人に読んでほしいブログ

映画『花束みたいな恋をした』を見て

※ネタバレ含みます

 

 

恋は泡沫で、ずっと何となく楽しいは続かない。

 

主人公麦と絹は、好きなものがとにかく同じでセンスも似ている。そんなセンスの似ている2人が度々重なる偶然に何度も立ち会うと、「これが"運命"なんだ。」そう感じるだろう。

そうして、イヤホンの様に運命の糸が絡み合うと距離をすぐに縮めた。

 

大学生は有り余る時間を使って、自分のあれこれに耽る。色んな世界に没頭する中で、自分を重ね、自分を探す。好きな作品がよく被る2人は、2人で作品を見ている時にお互いのセンスをぶつけ合う。そのやり合いが自分を一段高みへと連れて行ってくれる。そんな楽しさがあったのだろう。2人で一緒に世界を広げていたのだ。

 

絹ちゃんは、ずっとそんな日々が続くと思った。

麦くんは、ずっとそんな日々を続けるための安定を欲した。

 

麦くんは、絹ちゃんとの未来のために自分を納得させリアルへと向き合う。

社会に出た麦くんは、腹立つことも上手くいかない事も多いけど金銭的には安定を得られるし周りに頼りにされていく事に充実感を得ていく。

自分のセンスで戦うと一度は決めた彼だが、他の可能性が自分にあると気付けば視野は広がるものだ。自分に対する期待と周囲からの期待による責任感が彼の背中を押し、邁進していった。

彼は彼で違う青春を歩き始めた。

 

一方で絹ちゃんは、現を抜かしてまだ夢の中だった。

絹ちゃんは麦くんと世界を広げる時間が好きだった、いつだって彼女は自分の世界を広げてくれる、センスに溢れた人が好きなんだ。

お砂糖とミルクたっぷりの甘い甘いカフェラテを好きで飲んでいるのに、糖尿病になるよと言われて甘さ控えめのややブラックのコーヒーなんか出されても彼女は飲めないのだ。

絹ちゃんも分かっている、麦くんが大人になった事は。それを駄目と言ってはいけない事も。

だけど、彼と夢を語る時間が好きだった彼女にとって、その時間がなくなると、彼女には何の刺激もなく、甘い甘いカフェラテも冷めて、砂糖は底に沈んでしまうのだった。

 

スケッチブックに線画で描かれるセンス溢れた青写真が見たい彼女と、

アルバムに家族で幸せそうな写真を敷き詰めた青写真を撮りたい彼。

 

恋は泡沫、花は枯れる。

 

そう言えばマーガレットの花言葉ってなんだったっけ。

そうだね、愛も色々あるんだよ。