徒然

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半年 付き合い編

5月

彼と付き合いだしてまだそれほど経ってない頃に、1週間連絡が途絶えた。

1週間程度なら心配することはなかったのだが、付き合いたてで1週間連絡が来ないのは、付き合った途端に熱が冷めてしまったのかと思いかなり焦った。

久々に連絡が急に来たかと思えば、彼は何故だか泣いており、酒に溺れていた。

彼は重度のアル中で、「酒はガソリンや!」とよく言っていた。

その時彼に、1週間連絡取れなかったことを謝罪され、連絡を取っていなかった理由を打ち明けてくれた。彼は以前より肺を悪くしており、良性腫瘍が3つ肺にあった。そして、定期検診で4つ目が見つかり、これが悪性か良性かは分からないとの事だった。悪性の場合、余命は3ヶ月。そう医者に告げられたそうだ。

この事は家族にも友達にも話しておらず、彼女の私にだれよりも早く打ち明けてくれた。私に話した事で少し気持ちが緩んだのか、私に話してからは周りの親しい友人にも話し出していた。

彼はお酒を飲むと酷い泥酔状態に毎度毎度なっていた。そして、数10分間に一度はトイレに行って血を少し吐いていた。この吐血の繰り返しがかなり気になり、一度無理にでも病院に連れて行こうとしたのだが、猛烈に拒絶をされ諦めた。

その泥酔状態になると彼は私に「俺な、酒を飲まんとほんまに思ってる事も何も言われへん。しかも、酒飲んだら全部忘れる。しかも他の子と飲んだらそうでもないのに、何でかわからんけど自分(私)と飲めば絶対にすぐに酔うてまうねん。」といつも言ってくれた。

なんでか分からない?それは私が傍にいると安心をするからなんだよ。と、私はいつも心の中で返事をして微笑んでそんな彼を見つめていた。

 

彼は重度のアル中で、酒を飲まないとセックスができない男だった。しかし、前述のように酒を飲めば酒を飲んだ前後の記憶が殆ど飛ぶため、セックスの事は何一つ覚えていない。彼は経験人数が100人を超える猛者なのだが、それも朝起きて横に女の子がいたから、その子に行為をしたかどうかを聞いたり、ゴミ箱にゴムが入っているかを確認して、その延べ人数が100人を超えていたのだ。

しかも彼は私と知り合った当初、EDだと言っており、どれだけ顔が可愛い子と寝ても勃たないし、セックスに関してはあまり興味もなかった。むしろ、男性器を邪魔に感じており、病院に行って去勢をしようとした事がある程だった。

しかし、そんな彼が私を抱き寄せるとそれだけで男性器が反応していた。

そのため、彼曰く私とはセックスをしたいけど手の出し方が分からない。本当に好きだからこそ、躊躇ってしまうそうだった。でも、彼は好きな女の子としたくなり、「俺酒飲まな出来へんねん、でも飲むと記憶飛んでまう。それでもええ?」と聞いてきた。私は深く頷き、避妊具も付けずに彼との初夜を迎えた。

 

5月の終わり頃、彼と外で一度飲むことがあった。この日あまりに泥酔した彼を介抱するために、私の家に入れようとしたのだが、彼は以前に元カノから監禁された事があり体が拒絶をしてしまったのか、意地でも私の家には入ろうとはしなかった。

この日、この時私が彼を家に連れてこようとしなければ、悲劇は起こらなかったのかもしれない。

フラフラになり終電もないのに、私の家から遥か離れた自分の家に帰ろうとするので、私は心配してタクシーを配車した。

そのタクシーの中で私の名前を呼び、「もうな俺、自分がおらんと生きていかれへん。」と言ってくれたのをよく覚えている。

しかし、彼が私を私と認識してくれていたのはこの時までで、この言葉の数分後からは目の前にいる人が私と私と分からなくなり、遂には私の存在を忘れてしまった。

タクシーを降りて、2人でコンビニに入り、彼の肩を支えていると彼に「あんた誰?誰かわからんけど可愛いなぁ」と言ってきた。

ちなみに彼と付き合って可愛いと言われたのはこれを含みたったの3回である。

私は彼が泥酔し過ぎて記憶が混濁しているのだと思っていた。しかし、次の日の朝、酒も抜けている状態の彼と話しても、彼は私のことは何一つ覚えておらず、私のことはよく知らない女の子となっていた。

 

6月

記憶のない彼とも連絡を取り続けた。

この期間は私にとって最大の試練の時間だった。

どんだけ話しても何を話しても、彼は私のことを思い出すことはなかった。

しかし、私は諦めきれず毎日連絡を取り、また彼の家に行き彼と飲むことになった。

彼の家に行くまでの途中、不安に押し寄せられ何度も泣きそうになった。

彼の家に着くと、いつも見ていたいつもの彼の部屋で何一つ変わりはなく、そこに安心した。

この日、彼と記憶がないままでも付き合うかどうかを真剣に話した。彼にしてみれば、これまで散々遊んできた自分が真剣に1人の女を好きになり大切にしようとしていただなんて有り得ないと思っていたのだと思う。

でも私の言ってる言葉も嘘ではないという事は彼も段々と分かり始めていた。彼が自分が記憶喪失になり、私の存在のみを忘れているという事を受け入れ出すと「俺は嫌いな人のことは覚えてんのに、ほんまに好きな女を忘れてまうんか」と言っていた。本当にそんな事実がお互いを苦しめていた。

その日も出会った日と同じように抱き合いながら、一緒に寝た。彼の男性器はいつものように反応しており、彼がそれで「多分ほんまに好きなんやろうな。記憶はないけど、体が覚えてるんかも。」と言っていた。そんな本能的な気持ちに私もどこか安心して眠りにつこうとしていた時だった。彼が「なぁ〜、○○ちゃん(私)会いたい。」と私の名前を読んだ。私はあまりに唐突で少し笑いながら「ここにおんで笑笑」と返事をした。すると、彼はとてつもなく驚き「え!!!?ちょっと待って!なんでおるん!えー!好き!」と、私を強く抱きしめた。

 

7月

記憶を思い出してからは、それはもう楽しい日々だった。仕事終わりに彼に連絡を入れて、会える日に彼の家に行ってダラダラ過ごしたり、彼が夜に私に会いたくなると、何と私の家まで来てくれた。

彼は自分から彼女の家に行くなんて初めてだと言っており、それがとても嬉しかった。

時には外でデートをした日もある。私はデートが緊張して苦手なので、帰る際に疲れ果てて顔色が悪い状態で帰ったのだが、そんな私を心配して、彼が一度家に帰ったのにも関わらず、わざわざ私の家に様子を見に来てくれた。その時に「良かった!元気そうやん!」と言ってくれた。

 

しかし、楽しい日々も束の間だった。