徒然

読む人に読んでほしいブログ

ミュージカル「ソーホーシンダーズ」を見て

このブログは観劇の感想を述べると共に、内容にも触れますのでネタバレも含まれます。未観劇やネタバレが苦手な方は回れ右でお願い致します。

 

「彼が変わると思った?」

 

ヴァルクロがマリリンを慰める際に使った言葉だ。

マリリンは、それに"yes"の返事をしていた。

人はなぜ愛に可能性を感じるのだろうか。

 

私は元彼が記憶喪失だった。

彼の記憶喪失かもしれない片鱗は付き合う前から知っていたし、どう考えても危ない男だった。

でも、愛に飢えた彼を満たしたいと思った。

私が愛し支え続ければ、いつか変わる日が来ると思った。

客観的に見れば、そんな無茶な話と思える。だが、好きになってしまったら信じてしまったら一縷の望みを期待をしてしまうものが人間だ。

彼の記憶喪失に振り回され、疲弊しきっていたのに、それでもなんとかなるなんとかなると自分を勘違いさせ続けた。

それ程に思うほど記憶ある時の彼には愛されていたと思う。

だが記憶とは厄介なものだ。

彼女である時間が積み重ねられていくと幸せよりも、もう記憶が消えた時の辛さや突然記憶の消える彼に振り回されるしんどさが勝っていった。

あまりの悲しみに耐え切られず別れを選択した。その事を当時は、彼を愛していた私を裏切ってしまったと思っていた。

記憶が混濁する彼に抱きしめられながら「繋ぎ止めたい」と泣きながら言われたことがあった。

その記憶が毎晩毎晩反芻された。

 

劇中歌で、「自分が自由になる事で、相手を自由にしよう」(うろ覚えです、すみません)と歌っていた。

 

今はやっと彼との事を冷静に語れるほど、過去のものにできた。

やっと自由になれたと思う。

彼も私といるのは色んな意味でしんどかったと思う。電話で彼に「好きな子すら俺は忘れるのか。」と言われたのが最後の会話だった。でもその好きな子が彼にとっては、とてつもないプレッシャーだったんだ。やっと彼を手放した様な気持ちになれた。

 

しんどかった。

でも、間違いなく言えるのは、彼を好きになって良かった。

トラウマも強くて、彼との幸せな時間は固く蓋がされていて、1年前の事なのに思い出せない。それでも、彼と付き合えていたのは幸せでもあったからだ。

だがその幸せはあまりにも大き過ぎた。大きな幸せは続かない。

 

あえてハッキリ言おう、この世に幸せはない。

ただ、楽しい事は溢れかえっている。

今はもう幸せを追求しなくなった。でも楽しい事はしたい。楽しい事が積み重なると、きっと10年後20年後、その先もっと思い出話を語りながら笑える日が来る。

その時に「あー、人生って幸せだなぁ。」と言える事ができれば、人生は幸せになったのだと思う。