友人が「歌手になりたい」と言っていた。何度かその友人とカラオケに行った事があったが、確かに人に聞かせられる歌ではあった。
でも、それだけだった。
私たちは25歳、そんな夢みがちな事を平然と言ってのける年齢ではない。まだそんな事を言えるのかと、彼女の目の前で言いたかったが、なんだか言うのが憚られた。
彼女が歌手になりたいと言っていた頃から数年が経過した。久しぶりに彼女のSNSを覗くと、一生懸命マルチ商法をして、お金があるように見せかけていた。何とも無様だった。
夢とは無謀なものだ。目標とは階段を一歩ずつ登っていく事だ。
私は今ゆっくりとゆっくりと一歩一歩を噛み締め、階段を登っている。